意味をかたちに。ノベルティ制作にかける思い

ノベルティとは、一般的に「企業が自社の商品やサービスの宣伝や認知拡大を目的に無料で配布するもの」といわれています。フェンリルでは、お渡しするだけではなく、受け取ってから使い終わる最後の瞬間まで楽しんでいただきたいと考えています。

フェンリルの社員がノベルティの企画や制作の工程に携わることで、伝えたいメッセージを丁寧に表現することを大切にしてきました。今回はプレミアムノベルティとして制作した、『おいしい備災梅』をご紹介します。

おいしい備災梅とは

おいしい備災梅とは、おいしく備える備災アイテムとして手掛けたノベルティです。ノベルティを通じて、日々の感謝を伝えるだけではなく、お客さまの幸せ(以下、ハピネスと記載)を形にするにはどうすればよいのか。ノベルティのあり方から考えをまとめていきました。

日常生活のハピネスを願うことはもちろんですが、仮に災害が起きてしまったとしても味覚で安心をもたらしたい。そして、備えているという印象を与えずにインテリアに馴染むデザインパッケージを設計して、生活空間に非常食を置きたい、と思っていただきたい。

試行錯誤の結果「おいしく備えるノベルティ」をお届けしたいという思いにたどり着きました。保存期間が長い非常食を検討し、「梅」を使用したノベルティの制作を進めることにしました。


プレミアムノベルティ『おいしい備災梅』のValue Proposition Canvas(※1)

意味を丁寧につなげる

フェンリルのノベルティ制作は、コンセプトや伝えたいメッセージをどのように表現するかを整理することから始まります。お客様が受け取った時の感触や、使用するシーンを想定することで、心地よい体験や細部に凝らした工夫まで表現できるからです。「おいしい備災梅」では、利用シーンを平時と災害時の2つで考えました。
日常と非日常、どちらのシーンでもハピネスを届けられるよう、味はもちろん、パッケージの設計やデザインについても思いを込めながら形に表現していきました。

非常時の心と身体をいたわるもの

ノベルティで使用した『備え梅』は通常の賞味期限よりも保存期間が長く(未開封で3年間)、災害時の状況や人の体調を考慮した梅干しです。
備え梅は、災害時に支援物資がすぐに届かなかったり、歯磨きや食事が困難になったりすることで、唾液が出なくなり、体調不良になる人がいることから生まれました。携帯できる小さなサイズであることや、手軽に栄養分を補給できることから、災害時でも優れた非常食になるという観点で備え梅を選定し、販売元にご提供いただきました。


鮮やかさにシックな色を加えた安心感を与えるパッケージデザイン

生活空間に「飾って備える」パッケージデザイン

「もしも」のために、生活空間に備えてほしい。そういった思いから、場所を問わずにインテリアになじむウォームグレイを選定しました。また、資材は間伐材を原料にした紙を使用し、環境に配慮することも意識しています。飾るだけではなく、持ち運びの軽さや、廃棄するシーンまで緻密に設計しました。

パッケージのアクセントカラーは、梅が成熟していく様子を表現しています。アクセントカラーが美しく見える角度や配色を細かく計算しながら、ひとつずつ丁寧にサンプルの制作を進めました。
一般的にノベルティ制作では、資材の協力会社に箱の設計を一任したり、既製のもので制作を進めることが多いのではないでしょうか。フェンリルでは、コンセプトに合わせた箱の設計やデザインの配色、手触りなどもひとつずつ自社で選定しています。

「おしゃれなパッケージ」といった単純な発想ではなく、口に入れるまで楽しんでいただける見た目や、さり気なく安心感を提供して常にお客様のハピネスを願いたい。思いを「点」で終わらせるのではなく、「線」にすることにより、意味をつなげていくことができると考えています。


試作制作時のパッケージサンプル。
日常にも非常時にも、お客様に安心感や心地よさを与えるデザインとは何か。色や形、手触りから多角的に追求しました。

梅の成熟に込めた願い

今回のノベルティは、これまでフェンリルが制作してきた中でも特別なものです。3年かけてお渡しするため、お客様との関係をパッケージの色になぞらえて、年々熟成させたいという願いが込められています。
毎年お渡しする際は、「1年間ご無事でよかったです。来年も良い年になりますように」と、大切なお客様や社員の身近な人にお渡ししています。2年目、3年目を迎えるにつれてお客様がノベルティをお受け取りになる際に「昨年と色が違う」といった会話が弾むきっかけにもなりました。


造形美と梅の成長を表す経年美を組み合わせたパッケージデザイン

フェンリルの思いが詰まったノベルティ

一般的に、ノベルティは非売品が多いため、粗悪なものから洗練されたものまで多種多様なものが存在します。フェンリルが制作するノベルティには、記念品や贈答品だけではなく、プロダクトとしても成立する「使えるもの」という役割があります。

ノベルティの品質を商品として販売可能なレベルに高めることを意識することで、お客様に寄り添ったコンセプトの提案や、開発に役立つと考えています。
意味を形にすることは、プロダクトや企業イメージをブランディングする際にも欠かせない要素です。「誰に」「何を」「どのように」お届けするのかを考え、お客様に共感していただけるものを丁寧に作りあげる。フェンリルが大切にしているのは、そうした姿勢です。

ふとした時に、お客様がフェンリルのノベルティに込めた思いを思い出してくださると、新しいプロジェクトで共創できるきっかけになるかもしれません。どんな時でもお客様の身近にいられる存在でありたいと願っています。

ノベルティ制作から考えるブランディング

ノベルティをお渡しした際の反応としては、「販売できそう」「災害を起点にしたノベルティを制作する発想が素晴らしい」といったありがたい声を頂戴しました。また、「梅干しとは意外」「パッケージのデザインまで制作したのですね」など、普段ご提供しているプロダクトとかけ離れた意外性に驚かれるお客様もいらっしゃいました。

フェンリルは、アプリ開発やWeb制作など、さまざまなサービスに携わってきました。コンセプト立案やプロダクトを表現するためのデザイン、コピーなど一つひとつ丁寧に作り上げることを心がけています。この思いは、ノベルティ制作も同じです。

ブランディングで大切なのは、自分たちが伝えたいことを明確にし、お渡しするお客様に共感していただけるように丁寧に設計することです。「企業のビジョンや思い」をどのような形にすればお客様に伝わるのか。ブランディングやデザイン、設計技術などさまざまなノウハウを駆使する必要があります。フェンリルでは、エンジニアやデザイナー、マーケターなど、さまざまな部署を横断して専門家がスキルを持ち寄り、ものづくりに取り組んでいます。

今回ご紹介したノベルティなどの実績については、フェンリルのデザインストーリーをご覧ください。

フェンリルでは、ノベルティ制作のコンセプト立案だけでなく、お客様のプロダクトや事業戦略に基づいたブランディングも提案しております。気軽にお問い合わせください。

本記事の執筆者|勢井 真美
フェンリル株式会社 デザイン開発部ディレクター
前職は印刷現場を併設したデザインスタジオで勤務。ビジュアルデザインや設計・印刷加工技術を身につけ、商品企画とプロデュースを手掛ける。
フェンリルでは、独自の発想力でアイデアとデザインを融合し、お客様に共感していただけるブランディングツールを多数制作している。




※1.Value Proposition Canvasとは、アレックス・オスターワルダー、イヴ・ピニョールらが著書(バリュー・プロポジション・デザイン −顧客が欲しがる製品やサービスを創る-)の中で提唱したフレームワークのこと。「顧客のニーズ」と「顧客のために自社プロダクトの価値をどう創造するか」を整理し、提供価値を図示したもの。

この記事をシェアする

次のナレッジ

日系企業にも導入してほしい企業版WeChat

中国ビジネスでコミュニケーションツールをフル活用する

2023.5.23

グラフィックデザインのナレッジ

フェンリルが創るアートを楽しむ文化

感性を豊かにすることで創造力が高まる。 オフィスで五感を刺激する社内のブランディングについてご紹介します。

2023.8.18

フェンリルのナレッジを
お届けします。

ナレッジの最新情報やフェンリルのイベント情報などをメールでお届けします。
フェンリルのデザインと情報のアップデートを引き続きお楽しみください。

登録へ進む