斬新なアイデアから生まれたプロダクトは、市場に新たな価値を提供するチャンスです。
プロダクトの開発フェーズに合わせた調査設計を行うことで、ユーザーの顕在的なニーズだけでなく、潜在的なニーズの発見にもつながり、プロダクトの価値を飛躍させることにつながります。
フェンリルでは、ユーザーに「使いやすい」と思っていただけるプロダクトを追求して、アプリ開発を行ってきました。市場におけるニーズの有無を見極めるだけでなく、「ユーザーの心にどのようにニーズを作るか?」という視点を大切にしています。
アンケート調査とは、新しい気づきを得るために行うものですが、その役割や活用の仕方についてご紹介します。
プロダクトを生み出す2つの概念
一般的にプロダクトを開発する考え方は2つあり、「プロダクトアウト」と「マーケットイン」に分けられます。プロダクトアウトとは、「企業のビジョンや思想」を基準に商品を開発し、市場に提供する方法です。
想定ユーザーが「使いたい」と思うプロダクトをリリースできれば、新しい市場を開拓できる可能性があります。しかし、ユーザーのニーズや市場価値を冷静に見極めなければ、企業のエゴイズムによって生み出された「もの」にとどまってしまいます。これではユーザーに届けるどころか、大きな機会損失を招く恐れがあります。
マーケットインとは、「市場のニーズ」を基準にして商品を開発する方法です。ニーズを理解した企画開発をすれば、市場で一定の受容性が期待されます。
しかし、他社でも同様の情報を基に、企画開発を進行している可能性があります。競争優位に立つためには、市場のニーズと自社の強みをどのように生かすのかをあらかじめ検討する必要があります。
プロダクトアウトとマーケットイン、どちらの考え方にも優劣はありませんが、それぞれのメリットとデメリットを理解しておくことが大切です。
プロダクトアウトとマーケットインのメリット/デメリット
出所:『デザインプロデュース基礎』経済産業省/中小企業庁(2020)を参考に弊社編集部が作成
フェンリルは、Sleipnirを始めとしたさまざまな自社プロダクトを生み出してきました。
「本当に使いたい」と思っていただけるサービスをリリースするために、想定ユーザーと会話を重ねて開発を進めてきました。
しかし、多くの企業にプロダクト開発の課題を伺うと、「アイデアが市場や顧客のニーズと離れている」や、「市場のニーズをどのように掴めばいいのか分からない」といった悩みを持っています。
プロダクト開発のフェーズに合わせて適切な調査を選択することで、アイデアと市場のギャップを埋めることができます。
アイデアを磨くために調査を使う
企業では、開発しているプロダクトの受容性を測るために、想定ターゲットを集めてアンケート調査を実施することがあります。その一例として、手軽に実施できる『Google Forms』(Google社が提供する無料のアンケート作成/管理ツール)があります。
Googleアカウントを保有していれば、誰でも簡単に質問項目を設計し、配信できるツールです。
アンケートのフォーマットは、リッカート形式や選択式、記述式など種類が豊富で、さまざまな質問項目を組み合わせることができます(図1)。
アンケート結果はリアルタイムで集計され、棒グラフや円グラフが自動で生成されます。
また、集計データをダウンロードして、回答者の属性(性別や年代、職業など)に基づく嗜好性を独自に分析することも可能です。
このように、集計データをカスタマイズすることで、多様な分析を行うことができます。
【図1】アンケート調査に用いる主な調査形式
出所:『1からのマーケティング分析』恩蔵直人・冨田健司(2011)を参考に弊社編集部が作成
アンケートは、プロダクトの受容性やユーザーのインサイトを知るために行うものです。企画開発者が、「良い結果が欲しい」「好意的な意見が多いはずだ」といった希望的観測を持ってアンケートを設計してしまうと、分析結果にバイアスがかかり、正確に評価できないことがあります。企画開発における調査は、客観的思考を持ち続けることが大切です。
また、アンケートを実施する場所も重要です。例えば、香りや味、質感など環境の影響を受けやすいサンプルを評価する場合、それらを実際に使用するシーンに近い場所を選ぶ必要があります。アンケートを実施する場所が適切ではない場合、有用なデータを調査結果を収集することができない可能性があるからです。
以上のように、プロダクトを企画/開発する際は、「何を知りたいのか?」を明らかにし、客観的思考を持ち続けることが大切です。調査のタイミングや方法を的確に選択することで、プロダクトに生かすための有用なフィードバックを得ることができます(図2)。
【図2】新製品・サービス開発過程で行う調査
開発フェーズに合わせたアンケート調査を的確に行うことで、プロダクトの精度を高められます。
開発の流れについては、プロジェクトにより異なる場合があります。
出所:『MOT【技術経営】入門』延岡健太郎(2006)を参考に弊社編集部が作成
さらに、調査サンプルの収集方法については、量(定量調査)や質(定性調査)の特性を理解することで、プロダクトに合わせた調査設計を進めることができます。定量調査や定性調査の説明は、こちらをご覧ください。
ユーザーのインサイトを知るための調査
フェンリルではアプリ開発だけでなく、開発フェーズに合わせた調査プランを多数ご用意しています。
・アイデア・コンセプト発見ワークショップ
・コンセプト作成
・調査設計コンサルティング
・ユーザーリサーチ
・デジタルマーケティング分析
・データ分析コンサルティング
・市場調査レポート
詳細はフェンリルのサービスデザインをご覧ください。
プロダクトは、ユーザーが「ほしい」と思える魅力的なものでなくてはなりません。
適切な調査を実施して機能やUIについて検討を重ねることで、プロダクトを使いやすいものへと成長させることができます。
フェンリルでは、コンセプト立案や調査設計など、お客様のプロダクトに合わせたサービスを提供しています。課題に応じたワークショップ形式のプランも用意しておりますので、気軽にお問い合わせください。
森安 麻美
フェンリル株式会社 事業開発ディレクター
約10年間、化粧品メーカーでプロダクトマネージャーを経験し、スキンケアやメイクアップ・アイテムなどの商品開発とプロモーションを手掛ける。2022年にフェンリルに移り、事業開発ディレクターを務める。経営学修士。