High Conscious Engineers
Prudenzio Gennaro著
千葉 那須彦訳
v
フェンリルは、Software meets Design というミッションの実現に取り組んでくれる意識の高い仲間を募集しています。実際に応募されたみなさんには、通常、書類選考および面接を受けていただきます。
フェンリルの面接でまず問われるのは、みなさんの意識の高さです。何よりも、高い意識こそがプロダクトに価値を与え、ユーザーにハピネスを届け、ひいては世界の意識を高めていくことになるからです。
本書ではエンジニアの方を対象に、フェンリルの面接を通過するために必要となる高い意識の持ち方について紹介しています。本書を参考に、実際の面接にはこれ以上ないくらい意識を高めて臨んでください。ひとりでも多くの方の意識が高まり、ともに働く仲間となれることを願ってやみません。
フェンリルのプロダクトを使ってくれる意識の高いユーザーのみなさんに感謝します。フェンリルはより多くのユーザーにハピネスを届けるために存在しています。
フェンリルに開発を依頼してくださるクライアント企業各社に感謝します。フェンリルだけでは実現できない、素晴らしいサービスやプロダクトを世の中に送り出せたことで、よりいっそう意識が高まりました。
オライリー・ジャパン社に感謝します。本書は、オライリー・ジャパンの数々の優れた書籍への敬意を込めて制作しました。フェンリルではオライリー・ジャパンの書籍を数多く購入し、エンジニアの意識向上に努めています。
現在フェンリルで活躍している意識の高いデザイナー、エンジニアのみなさんに感謝します。みなさんのおかげで、フェンリルは稀に見る意識の高い集団になりました。
本書の各項目は「事実」「解説」「実践例」の3つで構成しています。
まず、「事実」でフェンリルに関連する事実を挙げます。「解説」では、その事実の背景や、どのように採用面接にいかすのかを述べます。そして「実践例」において、具体的に面接の場でどのような発言をすれば意識の高さを表現できるのかを紹介します。
vi
1章フェンリルを知る1
2章意識高い系エンジニア4
1
フェンリルの採用面接を受けるにあたっては、フェンリルという企業のことをできるだけよく知っておくことが肝要です。いつできた会社なのか、何人くらいの会社なのか、果たして本当に存在しているのかなど、意識が高ければ間違いなく把握していることがたくさんあります。本章では主要な項目を紹介するので、最低限おさえておきましょう。
フェンリルのロゴの形が何を意味しているのかわからない人も多い。
フェンリルという企業を象徴するロゴマークは、シンプルなシルエットで表現されていて、パッと見では何の形かわからない人もいます。あえて説明すると、「フェンリル」は北欧神話に登場する狼の名前で、ロゴもそれに由来して右上を向いて遠吠えしている狼の形になっています。
もしフェンリルのロゴの由来を聞かれたら、即答で「狼ですよね」と答えてください。間違っても紫色の夏野菜の名前や、関東地方にある県名を答えてはいけません(図1-1)。仮にそう見えてしまったとしても、意識を高めれば北欧神話の世界が目に浮かんでくるはずです。
図1-1 間違えやすいシルエット
2
1.2 プロダクトを使っておく
フェンリルのロゴって、遠吠えをする狼ですよね。実は以前、友だちが紫色の夏野菜みたいだって言ってるのを聞いて「たしかに」と思ってしまったんですが、あの頃はまだ意識が低かったんですね。もちろん、今はもう狼にしか見えません。声まで聞こえてきそうです。
フェンリルはプロダクトを使ってくれるユーザーのために存在している。
「フェンリルで活躍したい」という意識の高さは、フェンリルのプロダクトを使うことで表現できます。面接に来られる方の中には、フェンリルのプロダクトのユーザーの方も少なくありません。プロダクトの話題が出たら、フェンリルのプロダクトを使い倒していることをアピールして、他のエンジニアよりもいっそう意識が高いことを表現しましょう。
本当に意識の高いのであれば現在形で語れるはずです。図1-2 のとおり、「使っていました」という過去形の方と、「使っています」という現在形の方の間には内定率に有為な差が存在します。
図1-2 回答別内定率(フェンリル総合研究所調べ)
3
1.2 プロダクトを使っておく
メインブラウザは昨年出た Sleipnir for MS-DOS を使ってます。ずっと MS-DOS 版を待っていたのですぐに飛び付きました。マウスに対応してるブラウザって他になかなかないんですよね(図1-3, 1-4)。
図1-3 Sleipnir for MS-DOS(2014.4.1発表)
図1-4 マウス
4
フェンリルのエンジニアは、1ピクセルにこだわるデザイナーのイメージを、1ピクセルにこだわって現実のものにする恐るべき意識の高さを求められるます。並のエンジニアとは別次元の意識の高さをアピールして、凡庸なアプリではなく、ユーザーに感動してもらえる意識の高いアプリを実現できることを伝えてください。
エディタを使いこなしているエンジニアは開発スピードが速い。
エンジニアとして、主要な仕事道具であるエディタへのこだわりを見せてください。「エディタは何をお使いですか?」というような質問があったら、すかさずそのこだわりを表現しましょう。あなたは Emacs 派でしょうか? vim 派でしょうか? Atom 派でしょうか?まさかの ed 派でしょうか?どれでも構いません。とにかく熱く語ってください。その熱さこそが意識の高さのあらわれです。
なお、採用面接において宗教に関する質問は本来禁止ですが、エディタとエンジニアの意識の高さは密接に関与するため、特別に許可されています。
はい、小学4年生の時から Emacs を使っています。ウェブブラウザは Sleipnir ですが、その他のたいていの作業は Emacs ですね。Emacs Lisp でいろいろ拡張できるので、メールも Twitter も Facebook も Emacs です。あ、もちろんウェブブラウザは Sleipnir 使ってますよ。ただ、sleipnir.el とかあったら使いたいです。
5
2.2 勉強会には行っておく
フェンリルには勉強会に積極的なエンジニアが多く、社内勉強会も開催されている。
フェンリルのエンジニアの中には、自主的に技術系勉強会に参加している意識の高い人が少なくありません。中には自ら勉強会を主催している意識が高すぎる人もいます。
勉強会は、さまざまなエンジニアとの交流を通じて自身の成長をはかるいい機会です。何より、文字通り意識の高いエンジニアにも会えることでしょう。日々の忙しさの中で、放っておくと低下しがちな意識を再び高めるためにも、勉強会に足を運んでみましょう。勉強会に行く人と行かない人の意識の典型的な移り変わりを図2-1に示します。
図2-1 半年間における勉強会参加頻度と意識の移り変わり(フェンリル総合研究所調べ)
いつも朝活仲間で7時から勉強会で、昼は同僚とランチタイム勉強会をやってます。夜もほぼ毎日読書会や勉強会に行ってますし、週末はハッカソンやアイディアソンに参加してます。いまは勉強会に行くのが忙しくて、勉強した内容で実際に何かを作る時間がなくて困っています(図2-2)。
図2-2 意識の高い一日の例
6
2.3 アプリをリリースしておく
自作のアプリやサービスをユーザーに使ってもらった経験は貴重。
フェンリルは意識の高いアプリケーションエンジニアを大歓迎します。仮に実務での経験がなくても、十分な意識の高さが認められれば内定の可能性は十分にあります。
「興味があって勉強しています」と答えてくれる方はたくさんいますが、「自分でアプリを作ってリリースしました」と言えるだけの意識を持った方はまだまだ限られています(図2-3)。実際にアプリを作ってリリースするのは、技術的な面以外にも、ユーザーのことを考えたり、リリース後のフィードバックを体感できたりと、意識を高める絶好の機会です。
スマートフォンアプリでもウェブアプリでも、自分で作ってリリースするのに、障壁はほとんどありません。「忙しくて時間がない」などと言わず、意識を高めて作り上げ、リリースしましょう。アプリの内容は何でもいいのです。大切なのは意識です。
図2-3 面接時の回答比率(フェンリル総合研究所調べ)
先日、初めてのアプリをリリースしました。パズルっぽくドラゴン的な相手と戦ったり、鳥を飛ばしてブタをやっつけたり、そういう感じのアプリです。
7
2.4 ソーシャルコーディングしておく
フェンリルでは GitHub Enterprise でソースコードを管理・共有している。
フェンリルでは GitHub Enterprise が標準です。Git や GitHub を使わないと、自分のコードをプロダクトに反映することはおろか、そもそもソースコードを取得できません。入社してからこれらのスキルを学ぶようでは、まだまだ意識が低いと言わざるを得ません。
昨今の意識の高いエンジニアは、GitHub のさまざまなリポジトリに対するコントリビューションのチャンスを虎視眈々と狙っています。みなさんも、Git と GitHub のコンセプトをよく理解して、積極的に使いこなしておいてください。
ギットハブ?ギットのハブですよね。はい、使ってますとも。やはりハブあってこそのギットだと思うんですよ。ギットもハブも、すごい便利ですよね。あの、ソースコードの管理的なこととか、他にも、いろいろと。おかげで前に比べるとずいぶん楽になりました。とにかく、ギットもハブも得意中の得意です!
フェンリルの開発現場では繰り返す作業をほとんどすべて自動化している。
エンジニアの時間は貴重なので、繰り返し発生する作業はできるだけ機械に任せるようにしています。最近では意識の高いエンジニアによる Jenkins の導入・活用が進んでいて、ビルドやテスト、デプロイなど繰り返し必要な作業はすっかり自動化されています。
意識の高いエンジニアは、自宅でも Jenkins でご飯を炊いたり(図2-4)、家賃を振り込んだりしたりしていると言います。仕事も暮らしもあちこちを自動化して、意識の高さを感じさせると好印象です。
自動化には積極的に取り組んでいます。繰り返し発生する弁当の注文、残業申請、休出申請、上司への謝罪メールなどは完全に自動化していて、同僚エンジニアにも喜ばれています。このあたり、フェンリルで必要になるかどうかはわかりませんが、自動化なら任せてください!
8
2.5 自動化しておく
図2-4 ご飯
フェンリルはエンジニアにとってのキーボードを重要視している。
フェンリルではエンジニアの意識を高めるために、キーボードを選べる制度を導入しています。希望すれば Happy Hacking Keyboard や REALFORCE といったハイクラスなキーボードが支給されます。面接の中で、あなたもキーボードにこだわっていることを表現できれば、フェンリルと同じこだわり、つまり高い意識を持ちあわせていることの証左になるでしょう。
自宅でも職場でも Happy Hacking Keyboard を愛用してます。あのキーを押し込む瞬間こそ、エンジニアとして至福のときなんです。無駄のないフォルム、適度な厚みと重さ、正しい位置にある Control キー(図2-5)、静電容量無接点方式による重過ぎず軽すぎず絶妙の打鍵感、Fn キーを押さないと押せないカーソルキーとファンクションキー、どれを取っても最高です。
図2-5 正しい位置にある Control キー
9
2.7 いろいろなスマホを持っておく
フェンリルには開発用に山ほどスマートフォン、タブレットがある。
スマートフォンやタブレット向けのアプリを多く開発しているフェンリルでは、開発・テスト用に古いものから新しいものまで数えきれないほどのデバイスがあります。いくら意識の高いフェンリルのエンジニアといえど、すべてを把握するのは困難です。
この状況では、さまざまなスマートフォンについて深く理解している人材は貴重と言えます。「どんなスマホを使っているか」のような話題になったらチャンスです。人とは違うデバイスを使いこなしていることをアピールして、タダモノではない意識の高さを醸し出しましょう。
自宅では最新の KG-88 を使ってます。7インチのタッチパネル液晶がすごく使いやすいんです。4部屋あるのでそれぞれの部屋に置いて、どこでも使えます。前は KE-77 を使っててけっこう満足してたんですが、やっぱり新機種が出ると買わずにいられないんですよね。
フェンリルでは最新のデバイスを扱うプロジェクトが動いている。
IT の世界のスピードは日進月歩どころではありません。いまの流れの中心にいるスマートフォンも、iPhone が登場してから既に8年が過ぎようとしています。いつまでも「スマホ、スマホ」と言ってばかりでは高い意識も下降線を辿るというものです。実際、フェンリルでは最先端のウェアラブルデバイスを扱うプロジェクトが動いており、スマホに続く大きな波が視野に入ってきています。
最近では特にウェアラブルに注目しています。実は今、ひとつアイディアがあって、iPhone と連動する腕時計型のデバイスなんです。iPhone の通知を表示したりできたら便利そうですよね。こんど、Apple に持ち込んでみようかなって思ってます。まさか Apple が腕時計なんてアイディアは持ってないと思いますし。
10
2.9 意識は一日にして成らず
フェンリルのプロダクトは、どれもデザインと技術と高い意識によって開発されています。ここまで読んでこられたあなたは、すでに相当な高い意識を持っているはずです。少なくともあと一歩のところまできているのは間違いありません。
一朝一夕には無理でも、心がけ次第で誰でも確実に高められるのが意識です。まずは「エッダ」を手に入れてみてはいかがでしょうか。健闘を祈っています。
11
本書の発行日は2015年4月1日です。意識の高いみなさんであれば、4月1日がタイロス1号の打ち上げ記念日というだけではない、特別な日であると理解していることと思います。したがって、本書の内容を真に受けてもらっても困るのですが、まったくの虚偽ばかりでもありません。
エンジニアとして、たくさんのユーザーに素晴らしいプロダクトを届けたいという想いを持った本当の意味で意識の高いエンジニアのみなさん、いっしょにその想いを現実のものにしましょう。お待ちしています。
「詳解 フェンリル採用面接」の表紙を飾っているのはフェンリル(Fenrir)である。フェンリルは、ロキが女巨人アングルボザとの間にもうけたオオカミの姿をした生き物で、北欧と北区(大阪市)と土星付近に生息している。
オオカミとはその生態は大きく異なり、群は作らず単独行動する。生まれたばかりの時は、普通のオオカミと見分けがつかないが、成長したフェンリルは全長 45~60m ほどになり、肩までの体高は30~40mに逹する。体重は通常 2,000~2,700kg で、大きいものは 3,200kg を超える。毛色は黒、白、金、銀の四色である。肉食で、テュールの右腕、最高神オーディンを特に好んで食べる。1日の食物消費量は、約54㎏~60㎏で、 1頭が生息するためには、377,900 km2 の土地が必要と言われている。
怪物として恐れられる一方で、鎖を与えるとじゃれつくなどかわいらしい一面も持つ。鉄の鎖は噛みちぎるが、山の根元・猫の足音・魚の吐息などから作った紐は噛みちぎることができない。
2015年4月1日 初版第1刷発行
著 者Prudenzio Gennaro(プルデンツォ・ジェナーロ)
訳 者千葉 那須彦(ちば なすひこ)
発 行 人ハピネス・シュッパン
製 作フェンリル 4.1 製作委員会
実 装フェンリル 4.1 実装委員会
発 行 所フェンリル株式会社
〒530-0011 大阪府大阪市北区大深町3-1 グランフロント大阪タワーB 14F
Designed by Fenrir in Umeda (FNRR978-4-20150401-3-1)